人間工学的アプローチで働く人に寄り添う。タスクチェア「Act2」の開発秘話
公開日:2025.12.05 更新日:2025.12.05

長時間のデスクワークで、いつの間にか身体に負担がかかってしまっている……。そんな多くの働く人が抱える悩みに対して、イトーキは「人間工学」というアプローチで真摯に向き合ってきました。
その取り組みの中で生まれたのが、人気のタスクチェアを進化させた最新モデル「Act2」です。本記事では、科学的なエビデンスに基づいて生まれた3つの独自機構と、開発・設計に込められた想いに迫ります。
「Act2」誕生の背景にある“科学的アプローチ”
イトーキで最も売れているタスクチェアを、なぜ進化させる必要があったのでしょうか?

高橋: 初代「Act」が発売してからの5年間で、働き方が大きく変化したためです。
特に在宅ワークが普及したことで、お客様の椅子に対する知識や機能性への要求が格段に高まりました。実際に「Act」はアームレストの装着率が非常に高く、「体を支える機能」が重視されていることは明白だったのです。
この高まる期待に応えるため、Actの核である人間工学に基づいた設計、すなわち「体を支える機能」をアップデートする必要があると考え、「Act2」の開発が始まりました。
「Act2」を開発するうえで、特に大切にした考えやアプローチはありますか?

高橋: 私たちにとって、人間工学は目的ではなく、本当に使いやすい製品を作るための重要な「ツール」です。
オフィスでは、性別、年齢、体格の異なる様々な人が同じ椅子を使います。そのため、感覚だけに頼るのではなく、科学的なエビデンスに基づいて開発することが、ユーザーへの誠実さであり、製品の信頼性につながると考えています。

たとえば、人の身体の動きをデータとして収集・分析できるモーションキャプチャーなどを活用し、どんな体格の人がどこを支えれば快適なのかを徹底的に検証しました。そうしたデータが、Act2のあらゆる設計に反映されています。
データが導き出した最適解。Act2の核となる3つの独自機構
「呼吸する座面」というユニークなコンセプトを掲げる「レスピテック座面」は、どのようにして生まれたのでしょうか?
高橋: Act2の開発は、この新しい座面の技術を搭載したい、という想いから始まった側面もあります。

南: はい。従来のウレタンと同等以上の座り心地であることを前提に、物理特性と心理特性の両面で素材を一つひとつ比較検証しながら、長年の課題であった「通気性」と「耐久性」の大幅な改善を目指しました。
最終的に辿り着いたのは、縦型不織布と三次元網状繊維構造体を組み合わせた独自の2層構造です。10年使用を想定した厳しい試験でもへたり率0%という優れた耐久性を達成し、理想的な座り心地を実現することができました。
腰への負担に着目したという「ペルヴィス&ランバーサポート」ですが、どのようなメカニズムで身体を支えるのでしょうか?
高橋:座っている時は、立っている時よりも腰への負担が大きくなります。この負担を軽減し、理想的なS字カーブを維持するために開発されたのが、イトーキ独自の「ペルヴィス&ランバーサポート」です。
南:この機構は、姿勢の要となる「骨盤(ペルヴィス)」と、S字カーブの頂点である「第3腰椎(ランバー)」の2点を的確に支えることを目的としています。モーションキャプチャーで得たデータに基づき、それぞれのパーツが独立してしなやかに動くよう可動域を設計しました。これにより、ユーザー一人ひとりの身体の動きに追従し、常に最適なフィット感を実現しています。この形にたどり着くまでには、開発側からも積極的にデザインスケッチを提案するなど、デザイナーと何度も議論を重ねました。
アジャスタブルヘッドサポートはデザインと機能の両立が大変だったと伺いました。どのような点にこだわったのでしょうか?
富山:作業時と休息時、両方の姿勢で適切に頭部を支えるための可動域を確保しながら、それをいかにして背面の支柱と一体感のあるデザインに収めるか、という点に最後までこだわりました。
また、耳元での操作音がストレスにならないよう静粛性にもこだわり、上質な使い心地を追求しています。
最高のパフォーマンスを引き出すために。開発者からのメッセージ
Act2をこれから使うユーザーに、その魅力を最大限に体感してもらうためのアドバイスはありますか?
高橋:Act2は単なる椅子ではなく、作業のパフォーマンスを上げるための「道具」です。せっかくの機能も、使わなければ意味がありません。ランバーサポートやヘッドサポート、アームレストなどの調整機能を最大限に活用することで、その真価を発揮します。ぜひご自身の身体や働き方に合わせて細かく調整し、最高のパートナーとして使いこなしてほしいですね。
最後に、Act2を検討されている方へメッセージをお願いします。

南:身体全体がしっかりと支えられる感覚をぜひ一度体験してほしいですね。長時間・長期間使い続けられる高い品質と、人間工学に基づいた確かな快適性を実感できるはずです。

富山:「Act2」では、従来のタスクチェアでは難しかった「後傾姿勢で、ヘッドレストを前に出して作業する」ことを可能にしました。後傾することで身体はリラックスし、ヘッドレストが頭を支えることで視線がモニターに固定されるため、作業に集中しやすくなるんです。
体への負担が少ないこの姿勢を、ぜひ多くの方に体感していただきたいですね。個人的な体感ですが、実際にAct2を使い始めてから首や肩が楽になったと感じています。
高橋:Act2に搭載された様々な機能は、すべてデータに裏付けされたものです。ぜひ全ての機能をフル活用して、ご自身のパフォーマンス向上につなげていただければ嬉しく思います。
