スピーナチェア デザイナー

Designer's Voice
BOW DESIGN
中村保弘
なかむら やすひろ

1953年生まれ。
1971年本田技研工業入社、二輪汎用デザイングループに配属。
1993年バウデザインを設立し、さまざまな企業のインダストリアルデザインに携わる。
イトーキでは、2007年グッドデザイン賞でSpinaが金賞受賞。

もてなしの心を持ち合わせたチェア

立つ、座るを不定期に繰り返しているワーカーは、いつも一定の最適なポジションに座っているわけではない。
実際は無意識に「浅く座る」「斜めに座る」「伸び姿勢」などの多様な姿勢をとっている。

つまり、一定のポジションで座るF1レースカーのようなシートを目指すのではなく、もっと広い領域でノンストレスなすわりを実現することに着眼し、研究を重ねた。
また、多様な姿勢を保持するための位置調整操作のわずらわしさをなくすために、徹底して「無操作」にこだわった。
この結果、まるで気の利く執事のように「イスが迎えにくる」スピーナが誕生した。

無意識のうちに最良の座りに誘導し、その心地よさをしばらく後で気づく、あるいはずっと気づかない。
そんな「気づかないうちにケアされている」状態。これは日本の精神文化である「もてなしの心」を体現している。
そんな控え目な理性や感覚は、日本人特有の美意識でもある。

また、日本家屋の柱や梁の美しいバランス、立て格子の障子から入り込む柔らかな光などをデザインに取り込み、モノのあり様においても共通する美意識を貫いた。
背座の生地についても「和」の風合いや色味にこだわり、開発した。

日本人のDNAと現代テクノロジーが出会い、シンプルで理性的な存在感を持ったスピーナの「もてなしの心」をぜひとも体感していただきたい。